<2004.5.30> 予報は・・
・・・晴れ・・・

予報は 100%の雨を告げていた・・・・・・・・・筈?

闇に覆い被さる山影に圧縮された夜空は 今多くの星が瞬く   数10年振りに遣ってきたこの地にても

所狭しと広がる路上宴会場  瀬音の一人語りをBGMに時を忘れ語らい呑み続けた。

窮屈に身を細めていた夜空が 薄紅を差す青へと趣を変え みるみる濃い青へと変身して行く様を 寝不足に

酔いの入り混じった意識の中でぼんやり眺めて居たら ”雨何処に行っちゃったんだろう” 誰かが傍らで呟く

coffeを手に 徐々に鮮やかに成り出した自然林の若葉を愛で 何時もと同じ遅い始動と成ってしまう

其々が思い々の個所から入渓 上流向け路を

遡り 古いコンクリート橋から上流を覗き込んだ

其処に座る 大岩手前の淵を探ってみる事に

入渓者は多い様で 其のルートは良く踏まれる


三間の竿を伸ばし 大き目のミミズを選び出すと

頭部をチョン掛け 流芯脇に手首の返しだけで

ピシッと振り込んでやった!

案外流れの押しは強い様で 目印は素早く川面を

走り抜け 駆け上がり辺りで僅かに止まった? 合わせを呉れる事も無く下手に廻し竿をたてる 予想通り餌は

中程で食いちぎられて居る ”よしよし!” 一人頷いては餌を付け替える 今度は頭部から縫い掛けにすると

ハリス部分までたくし上げた 先程と同じ動作で同じ位置へと振り込んでやる ラインと目印は其れ自体思考を

有してるかの様に クルリと回り流れに乗る大岩を舐めるように淵底へと向う  竿先を先行させラインに張りを

持たせれば 餌を咥え深みへと反転逃げ込む相手は 自ら鍼掛かりする事さえ少なくない。

先程変化をみせた位置に掛かると 意識が合せを

指示するより早く 軽く手首は返っていた!

らしくもない繊細な合せに ”クックッ”と云った

魚の息遣いを感じる 竿をたて水面を割り胸に

飛び込んで来たのは アマゴ 思わず手にした

魚体を見つめる 35年も前になるのだろう 初めて

手にしたアマゴは この流域での出会いだった

その妖しき美しさに見とれ 我を忘れ虜に陥る

若かりし 自分の姿が甦ッて来るではないか

赤みの強い大きめな朱点 体側の配色とのバランスが 何とも言えず 正に自然が造り出した芸術と見えた

”此れだ この魚だよ 私の中のアマゴの容姿は・・・・・”

体温を魚体に伝えぬ様気を遣いそっと流に浸すと 何か思い悩むようにじっと動かなかった魚は 一瞬身を翻し

尾鰭で手のひらを叩き 勢い良く流へと消えて行った。

                                                      oozeki